近年、NFTアートが高額で落札されるニュースが話題になるなど注目が高まっているNFT。デジタルデータに唯一性を与えることができる技術であるNFTは、これまでいくらでも複製が可能だと考えられていたデジタルデータの価値を変えました。NFTは、Webの新しい段階である「Web3.0」とも深いかかわりがあります。
ここでは、NFTの概要や仕組み、NFTと密接にかかわるブロックチェーン技術やWeb3.0との関係性などを紹介します。
NFTとは?
NFT(Non-Fungible Token)は、ブロックチェーン技術によってデジタルデータの所有権を証明できるデジタル資産のことです。日本語で「非代替性トークン」ともいわれます。
「Fungible」は「代替可能」という意味であることから、「Non-Fungible」は「代替不可能、非代替性」という意味になります。「Token」は直訳すると、「しるし、シンボル」という意味です。IT系ではトークンは小さなデータのひとかたまり、データの箱のようなイメージで、セキュリティトークン、暗号通貨などのさまざまな場面で使われています。
従来のデジタルデータは無限に複製・改ざんが可能で、所有権の主張が難しいという課題がありました。デジタルデータにNFTを付加することで、「代替不可、唯一無二なもの」という価値が加わりました。これにより、デジタルデータにも希少性や資産価値が生まれたのです。
NFTがもたらす価値
NFTを利用することで、次のような価値やメリットが生まれます。
デジタルデータの作品の唯一性を証明する
NFTのブロックチェーンには、次のような情報が書き込まれます。
- デジタルデータの作成者
- オリジナルであること
- 取引履歴
- 現在の所有者など
これらの情報によって「唯一無二であること」が証明可能です。そこから、そのデータがオリジナルの作品、商品として扱われ、希少性という付加価値がつきます。
デジタル資産として取引しやすい
NFTはほとんどが共通規格で、さまざまなプラットフォーム(場所)で、唯一性を保ちながら売買可能です。NFTが取引されるプラットフォームは「NFTマーケットプレイス」と呼ばれます。
NFTの多くがイーサリアム(Ethereum、ETH)という仮想通貨で取引されています。イーサリアムはビットコインの次によく使われている仮想通貨です。
イーサリアムには、次のふたつの機能があります。
- 唯一性を保つブロックチェーン技術
- 契約の内容を自動的に実行するスマートコントラクト機能
NFTの取引には、NFTの代金に加えて「ガス代」と呼ばれるイーサリアムの手数料が必要です。最近はほかの仮想通貨やクレジットカード、PayPalが使えるプラットフォームもあります。
誰でも作成可能
NFTはブロックチェーン技術を利用していますが、複雑なプログラミングは必要ありません。作品のデータをアップロードできれば、誰でも販売可能です。
ただし、仮想通貨のウォレットを用意する必要があります。
破損や紛失のリスクがない
NFTはでデジタルデータなので、物理的に破損したり紛失したり、盗難にあうこともありません。
ただし、NFTを保管するウォレットのパスワードを忘れたりなくしたりしてしまうと、ウォレットにアクセスすることができず、NFTそのものも無価値になる可能性があるので注意が必要です。
NFTが活用されている主な分野と事例
NFTはさまざまな分野で活用されています。代表的な4つの分野について説明します。
アート
絵画やイラスト、音楽、漫画などのさまざまな作品が、NFTとして盛んに取引されています。
NFTは、実物やこれまでのデジタルデータと違って複製できません。本物であることを証明できるため、高額取引が多くなっています。
事例:
- 「楽座」
アニメのセル画や複製原画、漫画やクリエイターの原画などの所有権をNFT化して取引できるNFTマーケットプレイスです。取り扱っている作品には専門業者による鑑定書や認定書が付けられています。
- OpenSea
世界最大の海外のNFTマーケットプレイスです。アクティブユーザー数も出品数も多く、絵画だけでなく、ゲーム素材、音楽、トレーディングカードなどのさまざまなアイテムを取り扱っています。
ゲーム
NFTはゲームでもよく使われています。ゲーム内のアバターやアイテムがNFTとして取引されることが多いです。さらに「dApps(分散型アプリケーション)」を利用してNFT化されたゲームアプリもあります。
事例:
- CryptoKitties
猫を買って育て、売るdAppsゲームです。実際のイーサリアムを使って取引し、利益を出すことも可能です。
不動産
現実世界の不動産も、メタバース上の不動産もNFTとして取引されています。メタバース上の不動産も現実世界と同様に需要によって価格が変動するので、投資に利用されることが多いです。ただし、不動産取引ができるメタバースはそれほど多くありません。
事例:
- Ouchi Finance
現実の不動産をNFT化して売買するマーケットプレイスです。
- The Sandbox
メタバースのひとつで、メタバース内での不動産取引が可能です。
金融
NFTはイーサリアムという仮想通貨を利用しており、ブロックチェーン技術によって追跡が可能なので、金融分野でもよく利用されています。
事例:
- 株式会社三菱UFJ銀行
株式会社三菱UFJ銀行は、2022年にデジタル資産事業に参入しました。香港のAnimoca Brands社と協業し、NFTの発行支援やプラットフォーム構築などを行う予定です。
Animoca BrandsおよびUPBONDとのWeb3領域での事業立ち上げ支援に関する協業について|株式会社三菱 UFJ フィナンシャル・グループ
NFTと密接に関連するWeb3.0、ブロックチェーンとは
Web3.0 はインターネットの新しい概念で、NFTはWeb 3.0に内包される技術のひとつです。ここでは、NFTを理解するうえで欠かせない、Web3.0とブロックチェーンについて解説します。
Web3.0とは
Web 3.0は、Web1.0、Web2.0の次にくる、次世代のインターネットの概念、技術、サービスの総称です。「分散型インターネット」と、開かれたパブリック型のブロックチェーンにより実現されています。
分散型インターネットとは、特定の企業に依存せず、特定の国の干渉を受けない、非中央集権的な概念です。
Web3.0はブロックチェーン技術により性能とセキュリティが強化されており、検証もできます。Web3.0に関連する代表的な技術・サービスがNFT、DAO、メタバースなどです。
ブロックチェーンとは
ブロックチェーンとは、ネットワーク上にある端末同士をダイレクトに接続し、暗号技術を用いて取引の記録を分散的に処理・記録するデータベースの一種です。ブロックと呼ばれる単位でデータを管理し、それぞれのブロックを鎖(チェーン)のように連結してデータを保管します。
ブロックチェーン技術を応用したサービス群の総称が、Web 3.0です。
また、NFTはブロックチェーンに刻まれるデータの一部でもあります。ブロックチェーン上にデジタルデータの改ざんを防ぐための鑑定書や所有証明書を記録することで、ほかのデジタルデータとの判別が可能です。
NFTと関連する用語
Web3.0やNFTと関連が深く、よく一緒に使われる用語を説明します。
仮想通貨
FT(Fungible-Token:代替性トークン)、暗号資産とも呼ばれます。ブロックチェーン技術を利用した追跡可能なトークンです。NFTとは異なり代替可能なため、通貨として利用できます。
最も有名な仮想通貨はビットコイン(Bitcoin、BTC)ですが、NFT取引に使われるイーサリアムをはじめ、ほかにもさまざまな種類があります。
DAO
DAO(Decentralized Autonomous Organization、分散型自律組織)は、インターネット上で実現される自律的な組織です。中央で強力な力を持つ管理者、企業、国を必要としません。NFTと同様、Web 3.0の主要な要素のひとつです。
DAOはブロックチェーンを利用して実現しています。そのため透明性が高く、運営コストも抑えられます。
メタバース
メタバース(Metaverse)は、インターネット上に構築された商業的な仮想空間プラットフォームです。Meta(旧Facebook)が有名ですが、ほかにもさまざまなメタバースが存在します。
ユーザーは、メタバース内ではアバターで行動します。現実と同じように街を歩いたり、ほかのユーザーとコミュニケーションをとったり、経済活動を行ったりすることが可能です。
メタバース内の経済活動では、仮想通貨やNFTがよく使われています。
NFTの進化には今後も注目していく必要がある
NFTはデジタルアートやゲームなどの販売で話題になることが多いですが、今後さまざまな分野への活用が期待されています。実際、アートやゲームのようなエンターテインメントだけでなく、不動産や金融などのビジネス領域でもNFT取引は広がってきています。
Web3.0への移行に際しても、NFTは不可欠な技術といえます。新たなビジネスチャンスの可能性を含むものとしても、私たちの暮らしを大きく変えるものとしても、引き続き注目していく必要があるでしょう。 なお、Web3.0の活用は、Society 5.0実現への貢献も期待されています。Society 5.0について詳しくは、「SDGsとDXはどう関係する?「Society 5.0」とあわせて解説」をご覧ください。